表紙
窯變ハンター(表紙)
●ようへんはんたー  藤本窯2005年頒布書籍
B5判28ページ・ハードカバー(自家製本)/扉カラー・本文モノクロ

 本誌は2005年3月21日、東京ビッグサイトで開催された「コミケットスペシャル4]に便乗参加(サークル母体「RPGカンパニー2」のブース)した際、35部を9990円で頒布。購入者にはもれなく「北宋のアレ」がついてくるとゆー、コミケ初の陶磁器付き同人誌として出展されたものである。(もちろん主役はオマケの方であるが……)
 コミック部分は引用にも度があるだろうというモノなので掲載は不可能。よって、藤本窯2003年夏カタログを再構成した解説部分をアップ、足かけ5年に渡った陶磁器立体サークル「藤本窯」の末尾を締めくくりたいと思う。

やっと終わったよ……(05.3.25記)

22〜23P
P22-23 IIMONO THE ORIGIN
●刻花仰覆蓮龍首流浄瓶(北宋前期 高15.8cm:1969年河北省定県静志塔基出土) ●河北省定県博物館蔵
 北宋前期の定窯の作である。口が小さく、頸が細く、頸部は突出して縁があり、肩には龍首形の注口がある。肩は豊満で弦文が二本あり、圏足はやや外に開いている。 この種の瓶は北宋前期にかなり流行した。定県の塔基から宋代の定窯の浄瓶が二十四点出土しているが、いずれも注口があり、龍形や瓢形、半球形のものがあった。注口に蓋のついているものもあり、注口と蓋にそれぞれ耳があり、ひもで結びつけることができる。龍首浄瓶は朝鮮にも影響をあたえており、伝世する高麗青磁の中にも龍首浄瓶がある。(解説:馮小王奇)

●マ・クベの壺(宇宙世紀0079 中央アジアのとある鉱山)●ジオン公国マ・クベ大佐の私品
 たぶん、博物館からいただいちゃったものと思われる。骨董業界を差し置き、アニメーションの世界で龍首浄瓶を大メジャーに押し上げた功労者。

●刻花仰覆蓮龍首流浄瓶リピュア(現代 高30cm:佐賀県有田町産) ●藤本窯
 とあるベッドの下に埋蔵中 陶磁器とは縁の深い、佐賀県有田町で作られた現代の龍首浄瓶。北宋期のものがマシンメサイヤとすれば、これはモーターヘッドにあたる存在ではないでしょうか?

【解説篇】
他人の宇宙似じゃないんですよぉ。ないんですよ〜ないんですよ〜
 本編(なんか偉そう)にもあるように、『機動戦士ガンダム』中で通称「マ・クベの壺」と呼ばれている陶磁器は実在します。中国北宋期(960〜1127)、現在の河北省曲陽県、定窯で作られた浄瓶(じょうへい)と呼ばれる仏具がそうです。(日本でいえば平安時代、阿倍晴明が魑魅魍魎とバトルしてた頃)
 刻花仰覆蓮龍首流浄瓶のシルエットが選ばれた理由は不明ですが、普通の民間人には見慣れない形状は、視聴者の目に引っかかりを与えるアイテムだった事は確かでしょう。なお、浄瓶は壺ではなく、名称にもあるよう(次ページへ)

25P24P
P24-25 IIMONO HISTORY
(前ページより)にカテゴリーは瓶に属します。陶磁器関係者の前で“北宋時代の壺がアニメに出てる来るんですよ”などと言ったら“フッ、これだから素人は”の目で見られますのでご注意を。
 ただし、劇中において“あの瓶はいいものだー”とゆーセリフでは間が抜けるため、制作者側があえて読み違えさせてると思います。その点は誤解のないように。

How to Build IIMONO 推察:マ・クベの壺ができるまで
 全体のシルエットを北宋期の浄瓶から、胴部全体の文様はレプリカ浄瓶を参考にし、肩先の龍首部分は作画上省略されたと思われます。

浄瓶とその周辺
 浄瓶は仏の前で浄水を捧げる供養具であることから判るように、仏教伝搬のルート上に確認する事ができます。当然、日本にも伝わってきている。(左図仏教画抜粋参照)
 元来金属製だったものが、中国の製陶技術発達により、陶磁器製の浄瓶も作られるようになったといいます。朝鮮半島でも、高麗期(918〜1392)に青銅と磁器で多くの浄瓶が作られ、線象嵌や面象嵌技法で胴部全体を彩られた作品が多く残ってるとの事。
 『高麗図経(こうらいずきょう)』という書物には、ひろく貯水器として用いたとあるので、日常生活にも利用されていたと思われます。(手に入る文献ではここまでしか判りませんでした。(次ページへ)

メタルからセラミックへ
唐代の金属器浄瓶の形状をベースにしたという磁器浄瓶。浄瓶の表記ではないが、シルエットは唐代の白磁浄瓶に相似の[仙盞形水瓶(せんざんがたすいびょう)東京国立博物館蔵]と唐代の金属製浄瓶からも系譜を伺うことができます。 材質は響銅(銅・錫・鉛合 金)製の金属器水瓶と説明 がありました。


壺と瓶のちがい 佐賀県立九州陶磁文化館の案内板より。
       形 態                機 能            構成要素
壺(つぼ)  体が丸くふくらみ、口がすぼまった器  いれる。たくわえる      底+胴+頸+口
瓶(びん)  頸が壺より細長く、口が小さな器    いれる。たくわえる。そそぐ  底+胴+頸+口


※図版については藤本窯2003年夏カタログを参照の事。

26〜27P
P26-27 IIMONO FAMILY
(前ページより)使ってる図版とかがあれば使用法も説明できたのですが……すんまそん)
 北宋という時代は、中国の陶磁器史上に置いて隆盛を極めた時代で、とりわけ白磁といえば宋の定窯ものというくらい、定窯白磁は中国陶磁の好事家にはお馴染みだそうです。
 また、官僚国家であった北宋は文化的に華やかな時代であったと同時に、周辺国家の脅威に絶えず晒されていたという事で、現在の日本みたいじゃねえかと思いました。
 そう考えると、北宋期に流行したという浄瓶が同人誌即売会という文化的爛熟フィールドに出現したことは歴史の必然であった——という風にまとめて解説はおしまいであります。

もうひとつのいいもの
 2002年公開の富野悠由季監督作品『オーバーマン・キングゲイナー』第8話「鉄道王キッズ・ムント」中に見慣れたヤツが出てきます。監督自らのセルフパロディかスタッフの遊び心なのかは不明ですが、この一件が「マ・クベの壺」製作のきっかけとなりました。

参考文献・施設(サイトも含む)
・『art japanesque[日本の美と文化](全18巻)第四巻神々と仏』(講談社)
・『中国陶瓷全集9—定窯—』(上海人民美術出版社+美乃美)
・『中国美術全集2 陶磁』(京都書院)
・『中国古陶磁入門』(中島誠之助:平凡社)
・『中国・美の名宝2』(日本放送出版協会・上海人民美術出版社)
・『平凡社陶磁大系37 白磁』(平凡社)
・佐賀県立九州陶磁文化館
・東京国立博物館
・もろもろの陶磁器関連サイト
いますぐ書店で確認できそうな関係文献(福岡の紀伊国屋書店で確認)
・平凡社版『中国の陶磁5 白磁』(平凡社)

※浄瓶個々の解説も藤本窯2003年夏カタログを参照の事。


裏表紙
P28 藤本窯について
 藤本窯は、2000年冬のワンダーフェスティバルでデビューした、RPGカンパニーの立体活動部門みたいな造形ユニットでした。
 企画・運営・総指揮:DUN、原型:ぽったー藤本、広報・原型:ぷうぺらの三人からなる編成で、『総統グラス』・『ガス生命体グラス』・『遊星ランプ』(『宇宙戦艦ヤマト』より)を製作、望外のウケと支持をいただき“立体の世界もいいものだ”という感触を得ました。
 活動の総決算として2003年、今回の龍首浄瓶を発表。“良かった良かった”で締めくくる予定だったが好事魔多し。
 ひと昔前の大型二輪免許並みに厳しい版権審査をアクロバット的裏ワザでクリア(ワンフェスではガンダムに版権は降りません)したものの、現物が間に合わず販売にはいたりませんでした。
 昨夏の「キャラホビ2004」に出展(ガンダムも版権許諾対象になってます)したのみで、立体イベントの参加はここで終了。
 で、ちょっとゴニョゴニョしたのちに“もともとオリジナルは歴史上に実在するものなのだから、版権という括りに捕らわれなくてもいいやん”となりまして現在にいたる。このフットワークこそアマチュアの強みですな。
 食玩ほどリーズナブルじゃありませんが、陶磁器付き同人誌はこうして誕生したのです。
 この本を手に取ったアナタへ。パルプ繊維の紙や人間より陶磁器は長持ちします。ひょっとしたら宇宙世紀まで残ってしまうかもしれない。
 某公国の大佐が持っていたのはメイド・イン・北宋ではなくプレゼンテッド・バイ・藤本窯だったりして……どうか末長くご愛用ください。
 とは言っても、どうやって使うのか未だに不明です。ご利用にあたっては各機散開して個々に迎撃してください。
 それでは、ご縁があればまたどこかのイベント会場で……(栖)


fujimoto kiln final issue
[窯變ハンター—藤本窯のワンフェス・ノートより—]
2005年3月21日(コミケットスペシャル) 発行
企画:藤本窯/編集・プリント:SUMIKA inc.
●お問い合わせ先 DUN(だん)受付終了
●インフォメーション RPGカンパニー2 受付終了
※藤本窯はサークル解散につき、内容のお問い合わせは本サイト管理人まで。

帯書き
帯テキスト(上部より)
読めば(特定部位が)元気になる! 編集いたるところDUN魂あり。 もおぉ、いっぱい出ちゃう〜〜
同人サークル RPGカンパニー2/男魂(おとこだま) 続々刊行中! 情報はココでチェック。

宇宙世紀最大のツボに挑む!
あれは本当にいいものだったのか? 後付設定ではち切れんばかりに脹らんだガンダム世界の盲点、お笑いネタの提供源としか思われなかったアイテムに秘められた、現実とU.C世界を取り結ぶ真相とは!
 四半世紀を越え、若き考証学者と少年が、秘められた歴史の扉を開く……

お蔵入りと思われていた原稿に大増6P(水増しという)で贈る、伝奇漫画だかなんだか判らない、ピンポイントアフレコ・コミックス。
マジです!ごめんなさい!!の頒価 \9,990

業界初!陶磁器付同人誌。
ワンダーフェスティバルを駆け抜けた陶磁器立体サークルが、遂に一線を越え、“食玩”ならぬ“同陶”のリリースを敢行。凶星降り注ぐ戦線の砂塵に舞うのは、不吉の蝶かサボテンの花か?壺中天、入居者募集中。

藤本窯最後の残留兵。 ワンフェス参戦のプライベーター。 知らない強みで活動中。
POOPERAS 3D SECTION ラブタコス