西暦2000年2月6日のワンフェスにデビューした陶磁器立体サークル「藤本窯」。初リリース作であり世界最初の作例と思える「総統グラス」(出展:宇宙戦艦ヤマト)。これがすべての始まり。ラブタコスという個人ディーラーもこの出発点がなければ存在しない。
 感謝と悔やみを残しつつ消滅(2004年)し、ワンフェスに参加しているのは自分だけになった。売り子だったのに……不思議なものだ。とはいうものの薄いオタクの活動限界はとうに越えている。09年夏のワンフェスが終わった時点で、作る理由が存在する版権アイテムはこれしかない……個人活動の当初からうすうす感じていた総決算(ネタ切れ)的対象。
 あの頃ポップ製作や売り子でしか関与できなかった総統グラスを自ら手がける事。大げさにいえば生みの親を乗り越えていくための通過儀礼。矮小にいえば過去に対するオトシマエをつけるというネガティブ作業。ラブタコス史上最も暗い感情が底に流れるアイテム作り。その軌跡が以下の顛末である。我ながら器量の小ささに泣けてくる(タイトルに01と銘打っているがこのページで完結。続けて述べるほどの事件はないのだった)。

スケッチ
ラフスケッチ最終稿。(2009.10.11 sun)
作図データ
切り出し用作図データ。(2009.10.11 sun)
切り出しパーツ
イラストボード製切り出しパーツ(2009.10.12 mon)
一次原型フレーム
一次原型骨組み。既に松本デザインと判るトゲラインの威力。
(2009.10.12 mon)
一次原型肉盛り
骨の間にスチロールを埋める。シルエットはほぼ完成。
(2009.10.13 tue)
ゴム型取り
一次原型のゴム型取り。粘度低いシリコーンゴム使ったら
ダダ漏れして床を汚す。(2009.10.16 fri)
役目を終えた一次原型
ゴム型から外された一次原型に敬礼。(2009.10.17 sat)
原型接合失敗
硬化中のキャストに半分取り出した型を押し付けて結合。
接合面が判らずいびつな組みになり失敗。(2009.10.18 sun)
分割原型
半分づつ取った二次原型を摺り合わせて円形に近づける。
手間をかけた方がゴールは近くなるという一例。(2009.10.18 sun)
最終原型
トゲも繋ぎ、全体を磨き上げた最終原型。(2009.10.21 wed)

承 前
 2009年夏のワンフェスが終わり8月後半からスケッチを始める。藤本窯版にひっぱられないよう、家にあるグラスは見えない所に置く。飲用可という陶磁器アイテムのアドバンテージは大きく、使えば絶対体に悪いものが入ってしまう有機溶剤の固まりであるレジンキャスト版が対抗できるのはディテールとバランスの再現度しかない。タテとヨコの比率、設定画に描かれた女性をかたどった柄の部分、松本様式の肝であるトゲのカーブ形状の表現。
 スケッチはもっぱら移動中の高速バスや列車の中。都会(福岡県博多市)まで2時間はかかるので描き試す機会は十分。何回も繰り返す事でバランスが固まってくる。

一次原型製作〜完成まで
 兄弟モデルである「ガス生命体グラス」は粘土を紐状にしてグルグル巻く工作技法。今回は左右対称モデルに対して一番精度がでる紙原型→レジンキャスト置き換え方式で組んでいく。左右対称だから半分作ればいいというのも魅力。
 紙パーツを切り出して組み立てると全体のシルエットが立ち上がる。何度も語っている事だがデザイナー松本零士の魅力はもっとクローズアップされていい。メカニックデザインは一部分でしかなく土台にある造形様式こそ語るべき対象。骨組の間にスチロールを挟み、サンドペーパーでガシガシ削って立ち現れる曲線の妙。

 ゴム型作ってレジンキャストを流し、2個複製して合体(ゴム型節約のためトゲ部分は切り取って別に複製)。トゲパーツをレジンキャストで繋げてあとはひたすらサンドペーパーをかけまくる。紐粘土手法の時は乾燥によるひび割れや紐の間に隙間ができたりと補正が大変だった。行程は増えても最終仕上げはレジンキャスト原型の方が手間いらず。
 仕上げは年をまたいで1月23日に終了。柄の部分の女性シルエット、ドループ部分はもう少し彫りこめばよかった。
 今回、原型表面にサフェイサーを塗りペーパーがけでツルツルにして複製を取ったらとてもゴム抜けがいい。いままでこんな初歩の手順も知らずに抜いていたのだからもったいない。逆テーパーになるカップの内側もガス生命体グラスの時よりキュポキュポはずれる。

 ゴム型取りの際にトラぶった以外はスムーズに進行。これまでやってきた手法内で納めたせい。冒険がないと語る事も少ないのである。
 今回は原型製作より完成品出展の塗装でつまずいた。思った以上に白の隠蔽力が弱い。カップの内側をブラシで吹くと強烈な吹き返しが起きて塗料をまき散らす。日程が足りない(これは自分のせい)。思いあまって筆塗りを始めればよりつたなさ大爆発で刷毛後も鮮やかに残る仕上がりに。急いては事をし損じるのである。嗚呼……
 

製作を終えて
 自分のバランス感覚による立体化ができた。一番の収穫はこれ。手に持った時の収まり具合や重さもちょうどいい。だが口へ持っていってグイっとあおる事ができないのはグラスとして意味がない。陶磁器モデルに対しては陶磁器を持って対抗するのが前提であった。挑むなら同じ土俵でなければ意味がない。
 残された作業としては不様な塗装でWFに出展しまった失敗を繰り返さないようにする事。キチンと仕上げる事で総統グラス製作の締めとしたい。このパートだけは当初からズーッと進化していないな……無頓着すぎ。


版権申請画像
版権申請段階の原型。目地慣らしはやってないが完成品とほぼ同じシルエット。(2009.10.21 wed)


完成品画像
塗装済み完成品。原型とあまり変わらない。

 更新頻度は情熱に比例する。投入時間も同じ。半年以上前の製作ノートを今ごろアップしてるあたりで当方の今の熱さを察していただきたい。生活全体が淡白に傾き気味。WF参加だけであっぷあっぷして、語る事にふり向ける熱は雀の涙。
 次回はなんと09年夏のWFレポという亀進行。自意識が薄れ虚数の固まりにならないうちにアップしたいなぁ〜とぼんやり思う、夏の雪ダルマな日常変化を待たれよ。
(2010.4.18記)