ラブタコス戦記20080803 ‹‹ 疑似生命体製作篇 ›› ガミラス本星製作篇 ダウンアイコン
 今冬・夏のワンフェスで「リボ漢」というディーラーさんが「リボルテック・ヒルコ」という作品を出展されていた。両イベントにおいて拝見する機会を逸してしまい、“自分にとって解析できないあの形状をどんな立体に仕立てたのだろうか?”という興味を会場で満たせなかったのはとても残念。
 後日ネットで検索し、当該モデルとコミケ参加のサークルさん卓に飾られていた立体化ヒルコを見つけるも1方向からのショットで画像サイズも小さいためディテールやシルエットの全貌はとても判らなかった(立体物はいろんな角度で観ないと観たとはいえない)。
 ならば指折り数えてイベントを待つより指を動かし自分で組んで見た方がいい。ペナルティくらったうかつデブオタディーラーにもそのくらいの気概は残されている。原作に沿った形状には落とし込めないだろうという下向きの確信を持ちつつ、今年最後のガレキ製作にいそしんでみようと思う。
妖怪ハンター
本 ジャンプスーパーコミックス(1978年・連載は1974年)
 言わずと知れた諸星大二郎氏代表作のひとつ。最初のエピソード「黒い探求者」に登場するこちら側の生命とは別の系統樹に連なる異形の存在。幼い頃の方が頭への刷り込みが大きいという伝でいけば、リアルタイムで作品と接触できた時の運に感謝するしかない。『ブルー・シティー』(星野之宣・1976年)のコノドント群体とペアで記憶されてる方もおられるであろう。
 単行本1冊の栄養価はすさまじく、こうして語る事は今なお読み手の脳に諸星分を供給している証。食べても減らない視肉とは本作品にもあてはまる。
スケッチ1 まさお君の○○○○に一番近い形状。座りがよすぎるのじゃないかと思った
スケッチ2-3
スケッチ4-5
スケッチ6-7 最後のは当初いいかと思った絵。ちょっと逸脱しすぎ。縦長だし
設定画づくり 決定稿 2008.11.24(mon)
決定稿  9月から11月にかけて落書きを続ける。劇中のヒルコは「古事記」の水蛭子と同じく、望ましい姿を逸脱した生物として登場する。骨のない子供の意を持つ名称を骨だけの生物に当て嵌める発想と骨そのものなシルエットを紡ぎ出す表現力は今なお強力な魅力を持つ。
 前述したよう原作では全体像がパシっと写ったカットが存在しないため、群れの中からピックアップしたパーツをつなぎ合わせてシルエットを固めていく。不均等、ねじれ、いびつ、がヒルコの肝(ヒルコに内蔵はあるのか)。これを柱に描き散らかすものの、どこかしらバランスをとろうとする。不安感をもよおす原作の描写を引っ張ってくることができない。
 案の定テイストを吸収することは無理と再認識し、“ヒルコとはこういうものじゃないか”という俺設定で進めていく。この時点で道を誤ってるがスケールモデルでなく読書感想モデルなんだとして再現度については無かったことにして先に進む。白旗あげたままの行進に光は射すのであろうか。
骨格原型 2008.11.24(mon)
ヒルコ骨格  もっとアンバランスであるべきかと思うが、そこは持ち前の工作精度の甘さでおぎなっていこうと思う。各フレーム毎にナンバリングし、骨組みしたのが右記の写真。
 桧の工作材(3ミリ角)を銅線でつないだ肉付け用骨格。ヒルコ自体がホネホネクリーチャーなんでシルエットはこの延長上にあると予想している。
この時期は本来漫画描こうとコンテまで進めていたがペン入れ作業に恐れをなして宙ぶらりんになっていた。このまま年を越してしまったらバカじゃないかと順番を替えて進めているのが実情。
 夏のワンフェスに参加し損なった痛手が年末まで影響し、公私ともに絶不調の日々。とっちらかったテンションを統一するには手を動かして弾みをつけるしかないかと思う。足がかりを探し続ける次の一歩を待たれよ。(2008.11.30記)
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実際ヒルコの作例は多々あったと思う。ネット普及以前からワンフェスはあったんだし。無知故の言いっ放しとご理解いただきたい。湾岸ネタをからめたいという欲求に勝てなかったものなぁ。
 『湾岸ミッドナイト』内の情報だとチューニングカーの世界は80年代から隆盛を始めたという。映像や漫画といった二次元に出自を持つオタク文化の成長期とほぼ重なる。ユーザーがオリジナルに手を加えるという行為は同人誌でのパロディや模型のディテールアップと親和性が高い。『湾岸ミッドナイト』がチューニングカーの世界を漫画情報として変換してるおかげで、フォーマットの引用・見立てなおしがスムーズなのやしれん……って、ヒルコ製作とは関係ないな。
立体作業
 絵に描けない=原典の把握が貧相という説に疑問はある。描けなくとも見て組めれば立体化になんの不都合があろう。それはさておき、今回はまず“描こうが見ようが落とし込める原典のフォルムが判らない”という白旗スタート。「3機構成で変形合体できる赤白黄の飛行メカ」の設定だけで組むと、テスター1号とゲットマシンくらいの開きが出そうな状態。
 案の定、俺設定のスケッチさえ粘土こねて丸めたり盛ったり削ったりすると全然形状が違っている。手足をくっつけディテールを整え、着色した時にはどうなっているのか。唯一気の救いは作業中飽きないという点。版権申請やスケジュールのプレッシャーもなく、手を動かしていればゴールだけは保証されてるから気楽である。
 作り始めてみるとやっぱりパーツのバランスとってポーズを安定させようとする。安全パイ指向の小心者。作る側の振れ幅がモロわかり。なお不明な体表の色味や硬質感(原典のタッチだと骨よりしわがれた石の表情に思える)に手を入れた後はどんなシルエットになるのだろう。
11月26日・肉付け 11.26(wed) フレームにファンド粘土で肉付け
11月27日・頭手足 11.27(thu) 頭と手足をこねる
12月1日・胴削り 12.1(mon) 胴体の起伏付け。この段階のみの曲面構造
胴削り・背面 背面カット。パイプフレームの生物はどこから見ても異形
12.5(fri)基本パーツ完成
12月5日・手接合  手を結合し、足の加工と全体のバランス取り。まだやる事は多い。年内までに仕上げる事を目標にコツコツと進行中。次回更新で完成写真をアップできれば年3作の当社比1・5倍、豊作の内に09年を迎える事ができる。自ら出た言葉に刺されるやしれん次回の更新を待たれよ。(2008.12.7記)
 ワンフェス出展用に製作していないため、いざ参加モードに入ると出展品の製作記録を優先してしまい幾星霜。いつの間にか1年遅れの更新。それが作ったものに対する距離の表れ。
 それでも記すのは自分の糧になったものへの礼。自分の手を動かして無駄な事はない。その間だけは間違いなく自力で前に進んでいるのだ。5センチでも2ミリでも。動かさない方が多いので常に時の流れの方が早いにしても……
簡易版行程紹介
 前回アップした段階ではボテッとしたシルエットが問題だった。そのため以降はボディの削り込みとパーツのバランス調整を行う。製作工程はデジカメで押さえていたのだがヘタレ気分が災いし、前回以降の作業データは全て消してしまった。怠惰の代償。よってここにあるのはすべて完成後の姿である。
 タイトルバックのヒルコは09年5月の撮影。(まだ塗装前の地肌露出状態)オレンジバックのヒルコは09年11月18日の撮影。居酒屋写真は09年7月25日、同席していたコスモゼロマスター氏に撮ってもらったものである。記して感謝の意を。
正面
左側面
背面
右側面
作業メモ
2008.12.8(mon) 足を削ってかかと部分延長
2008.12.11(thu) 足バランス調整、後ろ指に粘土盛り足し
2008.12.17(wed) 足削って銅線で本体接続。足長すぎ
2008.12.18(thu) 足切りつめバランス取り。接合部粘土で固める
2008.312.21(sun)〜23(tue) 全体の肉を削る
2008.12.23(tue) モールドらしきものを入れる
2009.5.5(tue) モデリングペースト塗って地肌表現
2009.5.9(sat) リキテックス(グレー)塗り。失敗。
2009.5.(sun) 薄黄色に塗って失敗。洗い流し
居酒屋 お披露目場所:千葉県幕張本郷の居酒屋「土炉裏」
作業終了
居酒屋アップ  という流れでヒルコの実製作は塗装段階でストップ。以後凍結のまま現在に至る。ウォッシング状態のヒルコは黄色が残って骨っぽい風合いになっている。
 筆なりエアブラシなりで吹いてしまえば終わるものの、どうしてもしっくりくる色合いが想像できない。土もしくは骨のイメージで色をのせた途端“これじゃない”と判るのにその先がない。カラー彩色の原作が存在しない以上、すべては作る側の読み込みにかかっている。自分の読み込みが足りない。作った果てに出た答えはこれである。
 原作の再現度より自分がどう捉えているかをカタチにできた段階でよしとする。いびつなトラスフレーム。これがラブタコス版ヒルコの行き着いた到着点である。
 2009年夏の幕張で行われたワンフェス上京の際持っていき前夜の酒席で初お披露目。和風の店内とは相性がよかった。なんかマスコットみたいだ。ネタとして場のにぎわいに貢献してくれたのでモデルとしての評価はそれで十分である。原作と違い疑似生命体であっても“生まれてきてよかった”と思ってくれますように。
 さて、今年中にワンフェス日記とガミラス本星日記は間に合うだろうか?それより来冬のワンフェス仕込みの方が優先するのでは?歳末の忙しさで誤魔化そうとする卑怯者になるかの顛末を待たれよ。(2009.11.23記)
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