承 前
作ろうというより作れたらいいなとはワンフェス参加当初から思っていた。ただいかんせん、地表の下に海と大地が広がり天井は何本もの岩柱で支えられているという魅惑的な構造をどう作ればいいのか?これが全然浮ばない。以前作った「地球2199」は表面一つで済んだがガミラス星は外殻の表裏と内殻の表面という3段構え。それが球体として閉じている。パーティングラインは?塗装プロセスはどーするんだ?と難問山積みである。ワンオフで済ませるなら現在作りかけの「ヒルコ」みたくやりっぱなしで組み上げれば済むが、展示だけのワンフェス参加など意味がない。なんとか複製可能なモデルとして着地させるのが今回の眼目。
と、いう状態からスタートするガミラス本星製作記。遊星ランプから始まるヤマトアイテムの末尾を飾ることが出来れば本望である。
ベース
主要図版は1977年に買った劇場版『宇宙戦艦ヤマト』のパンフレットと自分の記憶。原型ベースは遊星ランプと同じく300円ガシャポンのケース(涼宮ハルヒが入ってた)。元手はいつも安上がり。それにしても○代目なんたら星人と同じくヤマトのパース描写は初代を越える事ができませんなぁ……緻密さや正確さという物差しが及ばないカッコよさ。“魂のこもったキャラクターは実はイビツであるべき!”とゆー富士鷹ジュビロ観に通じるモノがある。見ようと思って見ていれば見えていたかもしれないもの
パンフレットを横に置きガミラス本星をスケッチしていたらある事に気付く。地表に残るかつてあった大陸と海の痕跡をなぞっていくと大陸の形状や海との比率が連星のイスカンダルとよく似ている。地表に海があった頃のガミラス本星はイスカンダルと並ぶ青き水球であり、デスラーの“かつては美しい星だった”という台詞はこの事を指しているのかと!遊星爆弾で地表が焼けただれた地球も同じタイプの惑星だった事を考えれば、イスカンダル←ガミラス→地球という水惑星の相関関係まで物語の基礎に落とし込まれていたといえよう。遊星爆弾とガミラス本星の相似も含め、口紅から機関車どころでなくグラスから惑星まで統一感をもたらす松本零士の美術センス恐るべし。こと立体物に関して松本様式に手を動かす機会が多いのもむべなるかな。
真偽のほどは知れずとも注視しなければスルーしてしまう情報があることの一例。描いてみなければ判らなかったしガミラス本星作ってみようという気が起きなければきっかけもなかった。33年たっても発見がある作品には後付設定も公式年表も要らない。情報は作品の中に溢れている。単に見つける側のタイムラグが大きいだけなのだ。これもアマディーラー活動の余録。次は多分原型製作篇。ペン先ではなくルーターのビットが発見を削り出す事はあるのか? ない方に27宇宙ノットの自信アリな次回を待たれよ。
(2009.3.27記)
表題は製作と関係なく作っているうちに思いついた事。放送中、ガミラス本星には昼のシーンがない。故にイスカンダルの海へ降下するヤマトのシーンが映えるのだと。映像チェックした上での言でないので根拠の土台も知れたものだが、徹底して二つの星を対照的に映していた事は間違いないと信じる。(2009.3.27記)
ただしそれは美醜の区別ではなかっただろう。ガミラス本星はイスカンダルとは別の見映えがある。そこに惹かれるのである。磁気フェライトの雲に捕らわれたからではないのだ。
スケッチ
さびの成長で柱をつなげられないかという妄想
独自のビジュアルで作ろうという気はないため、スケッチの大半は映画パンフレットに掲載された画像をそのまま縮小サイズにまとめようというのが目的。模写してみると意外に穴ポコの数は多くないし一定の流れに沿って陥没しているのが判った。遊星爆弾みたいなガミラス本星描く人はいっぺんオリジナルに当たることをオススメしたい。柱の数や間隔は絵の描き込みと手の加工能力に開きがあるので設計図なみにツメるのはあきらめ、こんな感じという段階で早々に切り上げ。ザボンやボンタンといった巨大柑橘類サイズでないと内部の作り込みは無理。
スタンドメモは三点支持だけ活かし「地球2199」製作時に没ったディスプレイスタンドを流用する事にする。“地球の仇をガミラスで”なら違和感あるまい。同サイズだし。
スタンドのラフと原型の分割プラン
まとめスケッチ。あとは実製作で考えることにした
スタンド製作
昨年作ったM—C—KINで得た“女体のラインを入れ込むといい感じになる”仮説をディスプレイスタンドに応用してみる。松本美女の細腰をイメージして削り込み。曲線の塊であるところの女体は単純な応用であっても削り甲斐がある。フィギュアが造型のメインストリームなのはむべなるかな。
三点支持の受持部分を接合してディスプレイスタンドの基本組み完成。後日サンドペーパーをかけ、版権表示の樹脂板を貼り付けた。
三点支持の受持部分を接合してディスプレイスタンドの基本組み完成。後日サンドペーパーをかけ、版権表示の樹脂板を貼り付けた。
物持ちがいいと後で使えるという一例
擬人化ディスプレイスタンド?
本星製作
外殻ベースのガシャポンケースに内殻ベースのファンド粘土を押しつけて半球原型を作る。乾燥後、整形してかみ合わせ用のポッチつけてレジンキャストに置き換え。中空なので軽く仕上がると見込んだが体感では効果なし。ズシリ感の方が強かった。
複製品を仮組みし、ガシャケースを被せて全体のバランスを観る。隙間のアキ具合がガミラス本星に対するイメージを決定する肝。表面加工と柱を並べた時にどうなるかはまだ見えていない。
複製品を仮組みし、ガシャケースを被せて全体のバランスを観る。隙間のアキ具合がガミラス本星に対するイメージを決定する肝。表面加工と柱を並べた時にどうなるかはまだ見えていない。
中に餡を入れればパン生地のよう
基本原型でのディスプレイ。たまごアイスか?
この素体に加工を施しても部品数は変わらず5パーツの構成。複製の手間はさほどかからないと予想。これアップした時点で既に表面加工も終わっているが更新に意欲が湧かず後追いの状況。ネットの即時性もユーザーの処理能力がネックになっては意味がない。パソコンも20世紀モノで事足りる訳である更新が梅雨明けにならないことを本人も望んでる(だけかもしれない)次回の原型完成篇を待たれよ。
(2009.5.23記)
内殻作業
レジンの半球にファンド粘土を塗り、薄くのばした粘土を貼り大陸部分を作る
ガミラス本星内部の設定は知らないので外殻のような大陸図を想像。外殻被せてしまったらほとんど見えないので海と大陸があるって事を示せればいいと思った。賢明なる諸氏にはお判りと思うがこの作り方では外殻と柱の接合は不可能。一本一本摺り合わせて外殻内面に接地させるほどの超絶技巧は有していないのだから。外殻の穴から覗いても接合部は見えないだろうという妥協点で進めている。願わくば真の原型師が本星に挑まれ、絶妙の造型を発表していただいたいものだ。
ちなみにガシャポンケースはネジ切ってある部分は厚く作ってあるため、半球同士をくっつけても内部は完全な球体とはならない。均等な間隙を作るには内殻を削って調整した。見映えを優先すればガシャケースの内側削って均一にした方が吉である。ルーターで削るとガシャケースは溶けてビットに食いついてしまうので敬遠してしまった。
モデリングペーストを塗って凸凹作り。丸ポチとネジは外殻との位置合わせ用
プラ棒を差込み柱部分を作る。機雷のよう。本数は脳内プランよりかなり少ない
外殻作業
ケースを被せた状態。ガシャケースと柱の接地部分はガシャの内側を削ってくい込むように調整
柱(プラ棒)の高さは約3ミリ、直径は1.5〜2ミリ。このくらいの突起ならゴム型で一発抜き出来ると予想。表面のディテールはモデリングペーストまかせである。参考に使っているパンフレット掲載のガミラス星は緑よりも青味が強い。大陸だった部分は森に覆われていても海だった部分は湿地帯のような景色で、樹木よりも草やコケみたいな相を持っているのではと思う。原型も上がらぬうちから塗装について心配中。色というのはフォルムなみに記憶の刷り込みに関係している部分。ヤマトの艦色が灰色から青味の強いものに変わった時の違和感は誰にもおありかと思う。美術監督の槻間八郎氏が表したガミラス色の再現。これをはずしては作る意味がない。
外殻に貼り付けたファンド粘土を整形してからはがした状態。瞬着で本固定し大陸部分の完成
外殻の基本ベース。その後、モデリングペーストを塗って凸凹を出した
版権申請段階モデル
厚ぼったいので惑星のスケール感が出ていない
いろいろやって仮組みしてみたのが右記の状態。外殻の厚みと内殻の隙間バランスが空きすぎ。モデリングペースト塗りすぎて大陸部分が盛りあがりすぎというツメの甘さ。この状態で版権許諾申請を出してしまった厚顔ぶりも痛い話。ここから下はすべて申請写真として送ったもの。フィギュアだったら泥人形と呼ばれる仕上がりである。改修作業は進めているものの、これで許諾が下りなくても納得するしかないのは言うまでもない。
下ごしらえを終えている他の出展品を仕上げた後で本格改修に入る予定。またもやWF参加後のアップになりそうな気配濃厚であるが、梅雨明けにはもう一回と思う放言の顛末を待たれよ。
(2009.6.4記) ワンフェス復帰第一作という意気込みも作り込みというクラッチが滑りまくって空回りのパワーロス倍増〜とゆーのが今回の顛末である。製作記録まとめるのに意欲がないのもお判りだろう。
完成品出展でなく組み立てモデルで手渡す方が強者が集う場所の事、パチっと組み上げ美術監督もかくやというような塗装で仕上げてくれたのではないかと思う。
ワンダーあふれる二重構造惑星の魅力はラブタコス仕様のはるか先にある。
後ろ向き行程紹介
内核用ゴム型(上が柱用の二重ゴム型)
外殻と内核を結ぶ柱は内核側につける。そのためゴムの厚みを薄くした柱専用のゴム型を作って二重型にする。2mmほどの突起でもポキっといったら元も子もないので。結果は予想通り無理なく内核パーツを抜き出すことが出来た。が、ここで発生したのがレジンキャストの流れ込み不足。ベビーパウダーを叩いてやっても空気が残ってうまく柱ができなかった。イベント10日前にしてこのていたらく。
そのため柱部分はレジンキャストで複製した棒をみじん切りにして穴部分に差し込み、キャストを流して内核部分と繋げるというもの。はたしてゴム型もいじらず使え思い通りの結果が出た。その分流し込み前の手作業が柱の数だけ増えるという自業自得の結論も。
複製作業で一番手間どったのがこの部分。二重構造惑星を特徴づける要なパーツはそれなりの要求をしてくる。柱部分のディテールはただのツルツルした棒状なのも詰め切れなかった証拠。アマチュアディーラーのアマは甘ちゃんのアマ……
複製内核パーツ。空気抜き穴ごと外すと生き物のよう
内核塗装風景。中空でもけっこう重い
組立〜塗装哀話
7月も20日をすぎワンフェス上京まで1週間を切った状態で出来ること。もう単色吹きつけでやっつける道をたどる負け犬モード。灰色のサフェーサー吹いた地色に負けず外殻内側・内核部分のイエローが発色してくれたのはクレオスのGXシリーズのおかげ。外殻表面はさすがにまずいだろうとハイライトとシャドウ部分を厚化粧。色調合を間違えてしまいブルーの色味が完全にグリーンへ転んでしまった。シャクティとマーベットの肌指定の違いだけで漫画が作れてしまうくらい色表現はデリケートな領域というに……
そして最後に待ち受ける極悪仕様。外殻同士の接合面のすり合わせと塗装法が未解決のまま合体させたため接合面のズレと未塗装部分がそのままの状態で完成品と謳う面の皮の厚さ。
当初から予想される問題を先送りにしてそのまま押し出してしまったのである。
—作ったものには作者のひととなりが表れる—負の部分をモロ出ししてしまったのが今回のゴール。
外殻内側塗装。メロンのよう
外郭外側塗装。塗装時は内側ゴム型被せてマスキング
おみやげ感覚でチョイスしてもらうなら作りっぱなしの本作でもワンフェスにいってきました記念の役割は果たせるだろう。実際は“モーターヘッドを駆ってこそ騎士”というくらい常人の及ばない領域のディーラー諸氏がここかしこに屹立しているのがワンダーフェスティバルの世界である。
夏休みの工作レベルでお祭り参加を楽しんでる騎士の血が薄い当ディーラーでも会場の温度下げる方に貢献しちゃいかんだろうという自分縛りがほどけてしまった。
手間を省くほど得るものは少なくなる。『湾岸ミッドナイト』の教訓はそのままガレキ製作に重なる。ガレキの悔いはガレキで晴らそう。手は口ほどにモノを語れるか?次回の更新を待たれよ。
(2009.11.29記)
夏休みの工作レベルでお祭り参加を楽しんでる騎士の血が薄い当ディーラーでも会場の温度下げる方に貢献しちゃいかんだろうという自分縛りがほどけてしまった。
手間を省くほど得るものは少なくなる。『湾岸ミッドナイト』の教訓はそのままガレキ製作に重なる。ガレキの悔いはガレキで晴らそう。手は口ほどにモノを語れるか?次回の更新を待たれよ。
(2009.11.29記)